冷え性の原因と改善のための対策について

木枯らし吹く街のイラスト

寒い季節、暖房の効いた部屋で過ごしているのに、手足の冷たい患者さんがおられます。
「冷え性で夏でも手足が冷たいんです。冷房の風はとくに苦手で・・・」
そんなふうに話される方はとても多いです。民間企業が行った調査では、女性の約7割、男性の約4割が冷えに悩まされているという統計が示されています(株式会社ニッセンならびに養命酒製造株式会社による調査)。

体質的な傾向のように扱われ軽視されている観もある「冷え性」ですが、症状の重い方の苦痛というのは思いのほか深刻です。

例えば手足の冷感が痛みとして知覚される程であったり、体の芯が冷えるような感覚から嘔気を生じるような方もおられます。

体の冷えに悩まれている方であれば恐らくは相応の対策を講じられているはずですが、それでも辛い冷え性には自分では気付きにくい原因が存在するのかも知れません。

そこで、以下では冷え性対策の盲点になりそうな体の仕組みや生活環境にスポットをあてながら、改善方法検討していきたいと思います。

冷え性の原因と身体器官

同じ環境に身を置きながらも、体の冷えを感じる人と、まったく平気な人がいます。そのことは体の中で熱を生み出す能力や、冷えに対しての感受性に個人差があることを意味しています。では、その違いはどこから生じているのでしょう。

私たちの体温はすべての身体器官が参加する生命活動の産物です。それぞれの器官は互いに影響しあいながら協調し、身体を健康な状態に保とうと働いていますが、それ故に何れかの器官に不調が生じると他の器官にも影響が及び、生命活動が不活発になります。大まかに言えば冷え性もそうした状態であると言えます。

したがって冷え性の原因を端的に特定することは難しいのですが、ここでは体温の根源となる3つの要素に注目してみたいと思います。3つというのは「ミトコンドリア」「酸素」「栄養」ですが、以下にその働きについて記述していきますので、冷え性でお悩みの方は是非ご参照ください。ご自身の状態を把握して一歩踏み込んだ対策を講じる手掛かりとして頂ければ幸いです。

ミトコンドリア

冷え性について考える時にまず思うのは、そもそも体温は何処で生み出されているのだろうかということです。そうすると、「体温はミトコンドリアで生み出されている」という一つの答えにたどり着きます。

「ミトコンドリア」というと、学生の頃の生物の授業などで聞き覚えのある方もいると思いますが、その働きについて記憶している方は多くはないと思います。私自身、今回改めてその働きについて復習してみましたが、冷え性の原因とその改善方法を考える上では非常に大切な器官であると再認識しました。

体温の産生に限らず、私達の生体活動に必要なエネルギーは全身の細胞の一つ一つで生み出されていますが、そこで重要な働きをしているのが細胞の中の小器官「ミトコンドリア」です。

ミトコンドリアは食事で取り込んだ「糖質」と、呼吸で取り込んだ「酸素」を原料としてエネルギーを産み出しています。発電所が燃料を燃やして熱と電気を生み出しているのに似たイメージです。

けれどもそんなミトコンドリアの働きも、不摂生な生活習慣や加齢などによって低下してしまうことがあります。 例えば老人の細胞ではミトコンドリアの働きが不活発になりますが、お年寄りに寒がりな方が多いのにはそうした潜在的な要因があります。また、酸素糖質の供給が不十分な場合にもミトコンドリアの働きは停滞します。

「酸素」の供給に関わる器官

一つ一つの細胞で産み出されている体温。その原料として重要な「糖質」と「酸素」ですが、まずは酸素の供給に関わる器官について見ていきたいと思います。お伝えしたいのは以下の器官が正常に機能しないと、細胞での体温の産生が滞ってしまうということです。

【肺】

酸素で血液中の赤血球に取り込まれ、体の隅々へと運ばれてゆきます。肺は小さな気室(肺胞)の集合体でスポンジのような臓器ですが、呼吸の際に空気と接する面は最大100平方メートルにもなると言われています。その広い膜壁に毛細血管が緻密に分布し、外気からは酸素を取り込み、血液中の不要な二酸化炭素を排出しています。

【血液】

血液中の赤血球は酸素を全身へ届ける運搬係です。私達の血液の赤い色は赤血球に含まれる「ヘモグロビン(血色素)」の色ですが、鉄(Fe)を主成分とするヘモグロビンは酸素と結びつきやすい性質があります。血液はこのヘモグロビンの性質によって肺で酸素を補給し、全身へと巡っていきます。

貧血」と言われる状態は、一般的には血液全体の量ではなく赤血球が少ないことを示しています。赤血球が少ないと細胞への酸素の供給が不足するので、体温の産生にも支障をきたします。男性よりも女性に多い冷え性ですが、女性は月経などの影響でどうしても貧血気味になりやすく、冷えも生じやすい傾向があります。

余談になりますが、血液の赤色は酸素を含んでいる時といない時とでは色が異なります。酸素の豊富な血液は明るい「鮮紅色」酸欠の血液は「暗赤色」を呈します。このことから皮膚や唇の色、爪の色などが紫色に見えるときは、何らかの要因で血液中の酸素が不足していると判断することが出来ます。

【心臓・血管・筋肉】

心臓は血液の巡りを作り出すポンプの役割を担っています。心臓から圧出される血液の導管が「動脈血管」心臓へ戻ってくる血液の導管が「静脈血管」です。

心臓から圧出された動脈の血液は心臓の出口付近にある弁で逆流しないようになっています。動脈は徐々に枝分かれしながら毛細血管となり全身に酸素と栄養を届けます。そして毛細血管の細流は徐々に合流して静脈となり心臓へと戻っていきますが、心臓のポンプ圧は静脈にまでは届いていません。

心臓へと戻っていく静脈の血液に流れを生み出している力の一つは、心臓が収縮して弛緩(拡大)する際に生じる内腔の陰圧です。内腔の陰圧は静脈の血液を心臓へと引き込む吸引力になります。そしてもう一つ、末梢の静脈の血流を助けている重要な動力があるのですが、それは日常の動作に伴う「筋肉」の動きです。

筋肉の間を縫うように流れる静脈血管の内壁には、いくつもの逆流防止弁があって、これは動脈血管にはありません。

artery and vein. Circulatory system. Vector. Red indicates oxygenated blood, blue indicates deoxygenated

筋が収縮したり弛緩したりする際に血管が受ける圧迫。これが静脈血を前進させ、進んだ血液は血管内の防止弁で後退しないようになっています。心臓から遠く離れたふくらはぎの筋肉を「第二の心臓」と言ったりするのは、そうした筋肉と静脈血管の組み合わせによるポンプ作用を指しています。

「糖質」の供給に関わる器官

酸素とともに細胞でのエネルギー産生に欠かせない「糖質」ですが、細胞で利用される段階では「ブドウ糖(グルコース)」の形で血液中から供給されます。ブドウ糖は体の中で「脂肪」や「グリコーゲン」などに変換されて貯蔵されています。

【胃腸・胆嚢】

胃腸(胃・十二指腸・小腸・大腸)は飲食物を消化し、栄養を血液中に取り込む働きをしています。胆嚢から十二指腸に流れ込む胆汁は肝臓で作られていますが、胆汁には胃酸を中和する働きと、油脂分を乳化して小腸での吸収を助ける働きがあります。

【肝臓】

肝臓は化学工場であり貯蔵庫でもあります。食物から取り込んだ栄養素を原料として体に必要な栄養を合成・貯蔵し、必要に応じて血液中に供給します。体内の有害物質を化学的に無毒化してくれる働きもあり、飲酒後のアルコールの後始末なども肝臓がしてくれています。肝臓は沈黙の臓器と言われるほど忍耐強い臓器ですが、それだけに何か症状が現れたときは病状が進んでいる場合が多いと言われています。栄養が形を変えながら利用されていく過程を「代謝」と言いますが、肝臓は代謝の中核をなす臓器ですので、その機能低下は直接的に体温調節に影響を及ぼします。

【膵臓】

膵臓は血液中の糖を細胞に取り込んで利用する際に必要なインスリンを分泌する臓器です。

例えば暴飲暴食が繰り返されると、膵臓は疲弊してインスリンの分泌量を減らしてしまいます。そうすると血液から細胞への糖の供給が滞り、細胞でのエネルギー産生が減少します。血液中には利用されない余剰な糖が停滞し、それはつまり「糖尿病」の状態ですが、そうした余剰な糖は貯蔵のため肝臓で脂肪に作り変えられるのですが、必要以上に血液中に停滞する糖は血管の内壁にダメージを与え、血管を硬化させます。

糖尿病は心筋梗塞脳出血などの血管事故、あるいは毛細血管の破壊による手足の壊死腎不全視力障害などの原因にもなります。食後に血糖値が跳ね上がる血糖値スパイクも話題になっていますが、手足の末端が冷えて痛みが生じるような場合は毛細血管が傷んでいる可能性があるので、そうした方は糖尿病の兆候がないか受診してみることをお薦めします。

全身の器官を自動制御している自律神経系

寒さの中で凍えるとガクガクと震えが止まらなくなりますが、それは体温の低下を体が自動検知し、さらに自動的に筋肉を動かすことで体温を作り出そうとする反応です。

寒冷の中では体の末梢血管は収縮し、血流は生命維持に重要な臓器の収まる体幹に集中するので、手足はさらに冷えやすくなります。

逆に暑いときは体の末梢血管が拡張し、汗をかいて熱を体外へ放出しようとしますが、そうした各器官にまたがる一連の自動的な調節を行っているのが「自律神経」です。

自律神経には「交感神経」「副交感神経」の二系統があり、互いに相反する働きを有しつつ、拮抗しながら血圧や体温などの自動的な調節を行っていますが、その交感神経と副交感神経との調和が、ときに乱れることがあります。

ストレスやホルモンバランスの変化などが原因になりますが、自律神経はあらゆる器官の自動調節に関与しているため、その影響は全身に及び、症状も多様で掴みどころのないものになります。いわゆる自律神経失調症」の状態ですが、「冷え」「のぼせ」もまたその症状としては代表的なものであると言えます。

「筋肉」の運動熱が体温を補う

すべての細胞で生み出されている体温ですが、自動的な調節による体温の産生は、寒冷に対応できるほど十分なものではありません。私達は寒いときに体を揺すって体温を上げようとしますが、体温の不足を随意に補う手段として重要なのが体重の30~40%を占める筋肉の熱産生力です。

例えば自動車はガソリンなどの燃料をエンジンで燃焼させて「動力」を生み出していますが、そこでは同時に「熱」も産生されていて、その熱は車内の暖房に利用されたりしています。その仕組みは人の筋肉ともよく似ていて、筋肉もまたその活動によって副産物的に多くの熱を生み出します。そしてその熱は、寒冷時には体温を保つことに有効利用されます。

筋肉を自動車のエンジンにたとえてみましたが、大排気量エンジンがそうであるように、よく発達した筋肉も多くの燃料を消費しつつ大きなパワーを発揮し、それと同時に多くの熱を産生します。マラソン選手の筋肉のように、見た目はスマートでも高い機能性を秘めた小型高性能エンジンのようなタイプもありますが、いずれも体温調節における熱源としては頼もしい能力を備えています。

一方で、日頃からほとんど運動をせず筋肉量の乏しい人、あるいは前出の「ミトコンドリア」の働きが低下している人の場合も同様ですが、熱を産生する能力が低い状態ですので、それはやはり冷え性の原因となります。さらに糖質などのエネルギー消費も慢性的に少なくなりますので、肥満や糖尿病のリスクも高くなります。

冷え性と病気

冷え性に関わりの深い器官について述べてきましたが、以上で紹介した身体器官に限らず、人体の各器官は相互に関連し合いながら機能していますので、実際のところは何れの器官に疾病が生じても、その影響は連鎖的に他の器官へと波及し、冷えの原因となりえます。

「冷え」という症状から類推される病気は非常に多く、それだけで病気を特定することは出来ません。けれども、冷えが病気に関連して生じる場合のイメージをお伝えするために、私が体験した症例をご紹介してみたいと思います。

症例1.慢性白血病

通常血液病の患者さんにマッサージ治療は行わないのですが、歩行が困難になるほどの両足の浮腫で苦しんでおられるということで施術依頼のあった70代の男性です。病気の影響で貧血傾向が強く、いつも手足が冷たくて寒がりな方でした。

お宅に伺って治療に当たりながら私が気になっていたのが、居室で使用されている高出力の石油ファンヒーターです。

「貧血で体は慢性的に酸素不足なのに、これほど酸素を消費しそうな暖房器具と同室していて良いものだろうか?」

それが気がかりで、見ればエアコンもありますし電気暖房器具の使用をお勧めしたのですが、部屋の空気で燃焼する暖房器具のリスクをどれだけ説明しても「電気暖房は温かさが物足りないから」と、結局は理解が得られませんでした。

強力な熱風が吹き出していかにも頼もしい石油ファンヒーターですが、視点を変えてみると体を内側から冷やす側面も併せ持っています。冷え性に悩む方であれば、暖房器具を選ぶときはそうした点にも注意が必要です。

症例2.うっ血性心不全

80代の女性です。初めて訪問したのが寒冷期の2月でしたが、手足がとても冷たく赤紫色を呈していました。両手の甲には皮下出血も生じていて、軽度の凍傷(しもやけ)が疑われました。

うっ血性心不全は心臓のポンプ機能が低下し、体の血液循環が鬱滞する病気です。原因は色々ですが、例を挙げると

・心臓で血液の逆流を防止する弁に閉塞不全がある(心臓弁膜症)

・心臓の壁が薄くなり、心臓が収縮して拡張する際の静脈血の引き込みが弱い(拡張型心筋症)

・心筋梗塞の後遺症で心臓の収縮力が低下している etc…

血液が鬱滞すると細胞への「酸素」と「栄養」の供給が滞るので、体温の産生も滞ってしまいますが、心臓から遠い手足の末端はとくに冷えが深刻になりやすいです。

まとめ

病気によって冷えが生じた症例をご紹介いたしましたが、冷えの原因となる病気は紹介しきれないほど多種多様です。検診などで好ましくない数値が指摘されたときなどは、ぜひ医師に相談して冷えとの関連を検討してみてください。冷え性を改善する手がかりが掴めるかもしれません。


“冷え性の原因と改善のための対策について” への2件のフィードバック

    • 不思議なものですね。
      数日前にテレビで布袋とか雅とかがギターを弾いているのを見て
      「アキラはまだ音楽をやっているのかなぁ」
      などと思い出していました。
      達者でなによりです(^^)/

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